顎関節について
顎関節症・顎や耳回りの違和感がある
一生のうち2人に1人は経験するという『顎関節症』このような症状で悩んでいないですか?
- 口を開けようと思っても大きく開けられない
- 顎関節を中心とした痛みが続いている
- 顎がひっかかる
歯科に行けば、マウスピース治療や高額なかぶせ物治療、歯列矯正を勧められたかもしれません。顎関節症は次に示す3つの症状のうち1つ以上が出ます。
①口が途中までしか開かない
顎関節症になると口を大きく開けることが出来なくなります。痛みで開けにくくなる場合と関節の軸の不正で物理的に押さえられて開けにくくなる場合があります。多くの場合、口を曲げながら開ける様子を目にします。
人差し指・中指・薬指を揃えて3本の指が第二関節付近まで入れば問題ありません。
②開口しようとすると顎関節や筋肉が痛む
口を開ける、食物を噛むと言う動作をすると疼痛が出現します。特に耳の前の穴あたりに訴える人が多いです。この顎関節症は動作を止めると痛みは無くなります。
③口を開け閉めすると耳の前の穴で音がする
『カクンカクン』『ザラザラ』『ジャリジャリ』
と言う音がすることを気になります。これは関節音であるため典型的な症状と言えます。
顎関節の原因は寄与因子の積み重ねである
インフルエンザに罹ればインフルエンザウイルスが原因と言うことはわかりますが顎関節症について言えば単一の問題ではありません。これは様々な要因が重なりあって起こるからであります。長年言われてきた『嚙み合わせが悪いから顎関節症になる』と言うのは過去の話になりました。
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緊張状態が続く環境
- 不必要に歯を上下に押し付ける習慣
- 関節や筋肉の弱さ・不釣合い
上記以外にも様々な要素が考えられます。これらの要因が相まって自分の耐久力をオーバーしてしまうと痛みを始めとした不調が症状として出現します。
簡単に言えばストレスを受けたときであります。ストレスを受け上下の歯が接触している時間が長いとその関節・筋肉は働き続け、筋肉は疲労し顎関節周辺の痛みになっていきます。
顎関節の痛みに対しての施術
顎関節の痛みは、過敏化と言われています。関節への血流の悪化が発痛物質の滞りを起こし、痛みの過敏化を招きます。一般的に関節は十分動くことで必要な老廃物を拭い去り、栄養を補給しています。このポンプのような働きが出来なくなる病態です。それには関節が何らかの影響で傷つく、周囲の靭帯を痛めたことが考えられます。
機能が損なわれると周囲の筋肉は関節を動かさないように働きます。これによりポンプが動かなくなり血流が悪化します。筋肉の緊張は、開口時痛・前方・側方運動時痛へと繋がっていきます。
施術では、筋肉緩めるように関連するツボに鍼灸をしていきます。
顎関節疾患では、噛む筋肉である“咬筋”に緊張が見られることが多いですがこの筋肉に刺すような施術は行いません。咬筋の緊張を生む原因点だったり、筋肉の連動をみて鍼をしていきます。
急増している顎関節疾患
この20年に起きたIT化の急速な進展が関連していると考えられます。昔は筆記作業だったものをほとんどコンピューターへのキーボード入力になっています。
筆記による手作業であれば、肉体的な疲労もあり、作業を一定時間続けたあとは休憩時間が必要だったはずです。しかし、キーボード入力が普及してくると筆記作業ほど腕には疲労がたまりません。仕事量が多く忙しいときや気分が乗っているときはついついやり過ぎてしまうこともあります。
このとき、顎関節に注目すれば上下の歯を接触させたままになっています。心理的な不安や緊張感がつきものの現代は言うまでもなくストレス社会であり顎関節で悩む患者さんが多いのも納得です。
当たり前になっている顎の機能
顎関節は口であり、食物の摂取、咀嚼…と生命機能に直結する機能があります。
会話・くしゃみ・咳…健康的な生活を送る上でも当たり前になっています。
口は、噛む筋肉・顎関節・噛み合わせが健全であって、はじめて3者が協調して働いています。
顎関節は、振り子のように重力を感じている
ボクシングで相手のKOを誘う時にパンチをする所は“チン(顎先)”“テンプル(コメカミ)”と言われています。この顎先にかすっただけでも立っていられなくなります。これは衝撃を受けることで、脳が揺さぶられて一過性の脳震盪を起こすと言われています。
頭蓋骨にぶら下げられた下顎の骨は振り子のように重力を感知して上半身の平衡を可能にしています。この振り子の不具合が人の平衡感覚を簡単に奪ってしまうのです。
両側の側頭骨にぶら下げられた下顎骨は、まさに分銅のように動いています。その自由な動きを確保されている場合、重力の方向を常に感知することが出来ます。
私たちは頭蓋骨からぶら下がる“大きな振り子”を持っています。そこへの衝撃、そして機構への破壊は、周りの筋肉の拘縮を呼び起こし振り子の自由な動きを制限してしまうことになります。
めまい患者さんには、食いしばりもちが多い
不意のめまいは、人を不安にさせます。何とかふらつきを抑えようとして、つい歯を食いしばってしまう場合が多いのですが、これはさらにめまいを酷くさせてしまいます。めまいの患者さんには“食いしばり持ち”が多いのですが、長年の習慣によって筋肉の拘縮を起こし、顎関節の動きが悪くなることもあります。
この場合も顎の動きの悪さがめまいを引き起こすと言う意味ではふらつくボクサーと同じなのです。上半身の平衡感覚を考えるときにはこの顎関節は大切なポイントであります。
顎の動きの考察
顎の動きは見かけ上は下顎の動きが目立ちますが、その動きを実現するためには支点が必要です。上顎は一見動いていませんが、力学上では反作用的に運動しています。
下顎が動くためには、頭蓋骨およびそれと一体化している上顎が固定されている必要があるからです。“動かない運動”が必要になります。
下顎が動いて口を開けようとしても上顎が固定されずに下顎の動きについてきてしまったら永遠に口が開きません。その逆もしかり。上顎骨が動かないためには頭蓋骨の固定が必要になります。その頭蓋骨を固定している視点は、第三頸椎にあります。
第三頸椎は、頸椎の前弯の中心にありアーチ橋で言えばトップストーンの位置にあたります。頸椎の構造的な力を担保していると言えるこの場所が不安定になることは、顎の動きの不安定さに繋がります。
この頸椎の安定性と顎関節の健全さは相互に影響するもので顎関節がおかしい場合も頸椎の安定性を脅かすことに繋がります。頸椎前弯がなくなる、ストレートネックの人は何かしら顎関節に不安を抱えている人が多いのはこのためであります。頸椎の安定性には顎関節の動きと非常に密接かつ重要な関りがあります。